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外来出番表 [PDF]
前立腺癌 浮村・沖原・白石・藤原・上田・粥川・宮下
前立腺がんのFocal Therapy
前立腺の「限局性がん」と診断された患者さんを対象として、がんの部位の局所だけをきわめて低温にし、がん組織を死滅させる冷凍手術器を用いてがん病巣の治療を行う医師主導治験(前立腺がん病巣標的化 凍結治療)を2021/10月から実施しています。
血液PSA値・MRI画像・標的化針生検情報に基づいた先進的な前立腺がん診断法による的確な治療選択
血液中のPSA(前立腺特異抗原)値を測定する検診法が広まり、前立腺がんは根治可能な状態での発見が可能となりました。一方で、過去にはPSAが高値であるだけで繰り返して前立腺生検が過剰に行われ、即時治療しなくてもよい進行の遅いがんが発見されるという、過剰検査や過剰診断、過剰治療が行われていたという臨床的課題がありました。その課題を解決すべく、我々は日常の前立腺がん診療に先進的技術を導入して改革に取り組んでいます。具体的には、MRI(核磁気共鳴装置)から得られる情報と超音波画像を融合させる最新の画像誘導技術によって、即時治療が必要ながん病巣だけをできるだけ体に負担のかからない方法で見出し、正確ながんの悪性度・進行度の診断を可能にし、それに基づく的確な治療法選択肢の提案を行っています。
多くの治療選択肢を備えた前立腺腫瘍外来
当科はロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術をはじめ、強度変調外照射放射線治療(IMRT)や前立腺内部から放射線を照射する小線源療法、さらにはIMRTと効果は同等ですが合併症の減少が期待できる先進的な陽子線治療など、多くの治療選択肢を有する国内屈指の治療施設です。さらに、近未来にはがん病巣だけを標的化して治療することで、尿漏れなし、性機能の温存率も向上できる新しい治療選択肢を、提供すべく臨床研究開発に取り組んでいます。即時治療が必要でないがんが不運にも見つかってしまった場合でも、MRIや先進的技術を導入して、侵襲的治療を必要な時期まで回避しようとする未治療経過観察という選択肢も、必要がある場合に十分な説明の上で提供しています。
手術療法
手術療法では、体に負担の少ないロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RALP)を行っています。RALPは、以前の開腹手術と比べて短い入院期間で、出血量も少なく抑えることができます。さらに、手術中には、経直腸超音波にてリアルタイムに前立腺や重要な隣接臓器を描出することにより、腹腔鏡だけでは認知できない死角を確認することを可能にする世界をリードする先進的技術を用いています。この先進的画像誘導技術により、術者が腹腔鏡だけでは見えないがん病巣の存在部位を確認することが可能になり、腫瘍の完全切除率の向上と合併症の低減が期待できます。この、リアルタイム超音波ガイダンス法は、術後尿失禁の早期改善や勃起機能温存の向上による、術前から術後への生活の質の維持への貢献が期待できます。
放射線療法 【最新の陽子線治療の導入 低侵襲な小線源療法も選択肢】
放射線治療においては、当院放射線科との連携によりコンピューター制御で前立腺に限局して体外から照射する強度変調放射線治療(IMRT)と前立腺内にヨウ素125シード線源を永久的に留置して前立腺内部から照射する小線源療法を日本有数の症例数を実施しています。さらに、本邦で前立腺がんに対して陽子線治療も保険収載され、当院では2019年春より陽子線治療が可能となり、多くの患者様が来院されています。これによりがん制御に関してIMRTと同等で、かつ、治療関連合併症の減少が期待されます。
このように当院では患者様のニーズにあった多様な放射線治療選択肢の提案が可能となっています。
薬物療法
現在、前立腺がんには男性ホルモンを抑制する薬剤をはじめとして、多くの保険適応のある薬剤があります。最新の知見と豊富な診療経験に基づき、患者様の状態や希望に合わせた的確な薬物治療の選択肢を提示しています。また、患者様の利益につながるような先進的な臨床試験にも積極的に参加しています。
MRIに基づいた前立腺癌診断と画像誘導による手術支援
外来の特色
私達は、このような前立腺癌診療に目を向け、MRIを使った正確な診断技術と、そこから得られた前立腺癌の3次元情報を使って、より体に負担のかからない的確な治療法の提案を行っています。
特にロボット支援前立腺全摘除術は、以前の開腹手術と比べて短い入院期間で、出血量も少なく抑えることができます。さらに、術後尿失禁を早期に改善させ、勃起機能の温存を図ることによって術後の生活の質を考慮した手術方法を取り入れています。
腎癌 本郷・奥見・藤原
小径腎癌に対する治療 「ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術」「凍結療法」
一方、腹腔鏡手術は高度な技術を必要とするために、症例によっては開腹手術を選択することもあります。そこでロボット支援手術が注目されています。ロボット支援手術は腹腔鏡手術の進化版ですが、高解像度の3D画像を見ながら、人間の手の関節以上の高い関節自由度を持つロボット鉗子を用いて実施するため、精密な切開や縫合を素早く行うことが可能です。当院では2014年に導入し、これまでに100例以上に対して行われ、良好な治療成績が得られています。
また、全身状態がよくないために手術が困難な場合などは凍結療法(Cryoablation)行っています。2013年に当院に導入され、単腎や多発腫瘍あるいは高齢者や合併症を有する症例などに行なわれ、良好な治療成績が得られています。
転移性腎細胞癌に対する治療「分子標的治療」「免疫チェックポイント阻害剤」「臨床試験」
尿路上皮癌(膀胱癌・尿管癌・腎盂癌) 山田・井上
尿路上皮癌内視鏡手術
特徴
- 狭帯域光観察法(NBI)、光力学的診断(PDD)を用いた内視鏡診断
- ロボット支援下腹腔鏡下膀胱全摘術
- 腹腔鏡下腎尿管全摘術
- 外来化学療法(GC、GCBDCA、TG)
- 免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)
膀胱癌は早期に発見し治療すれば予後良好な癌ですが、膀胱内再発が多いことが問題です。膀胱内再発を減らすためにNBI、PDDを用いて診断精度の向上を図るとともに、BCGおよび抗癌剤の膀胱内注入療法を行っています。
浸潤性膀胱癌に対しては、開腹の膀胱全摘術に加え、低侵襲な根治治療としてロボット支援下腹腔鏡下膀胱全摘除術も行っています。
進行癌に対する抗癌剤による化学療法は外来化学療法で通院を基本として患者様の負担を出来るだけ軽くするようにしています。また化学療法抵抗性の患者様には免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブ(キイトルーダ)による治療を行っています。
腎盂尿管癌に対する外科的治療は可能な限り腹腔鏡下手術を行っています。
<campbellより引用>
精巣癌 中村・上田
- 導入化学療法を規定通りきちんと行う
- 腫瘍マーカーが正常化することを目指して救済化学療法を継続する
- 残存腫瘍は可能な限り切除する(神経温存/腹腔鏡)
当科における精巣腫瘍診療の特徴
化学療法
腫瘍マーカーが正常化しない場合などは救済化学療法を行います。
パクリタキセルやゲムシタビン、イリノテカンを用いた治療を導入しています
残存腫瘍切除
後腹膜リンパ節郭清術(RPLND)では射精神経温存RPLNDを積極的に行っており、約80%で機能温存が可能となっています。
治療前の腫瘍が小さな場合は、先進医療として腹腔鏡下RPLNDを行っています。
肺や肝臓、頸部リンパ節など後腹膜リンパ節以外の転移巣切除も積極的に行っています。
呼吸器外科や消化器外科、耳鼻咽喉科、血管外科など他科との協力体制も整っており、十分な集学的治療が可能です
腎移植・血管外科 奥見・宮下・井上
腎移植
京都府立医科大学附属病院での腎移植は、これまでに移植・一般外科が担当し約1,190例の腎移植を行ってきました。この度、本学泌尿器科が腎臓内科と協力し、術前外来、腎移植術入院、退院後維持期を併診にて管理する新体制を構築しました。
生体腎移植の場合は、血液型適合/不適合ともに通常は手術1週間前より入院し免疫抑制導入療法を開始、術後は約2週間の入院を予定しています。抗ドナー特異的HLA抗体陽性やクロスマッチ陽性の患者様に対しても、リツキシマブ(保険適応拡大になるまでは本学倫理委員会での審査申請予定)、免疫グロブリン大量療法および血漿交換による脱感作療法を行います。
また、これまでの腎移植例データの国内臓器移植登録事業への登録を徹底し、独自のデータベース構築にも取りかかっています。
生体腎移植ドナーに対する腹腔鏡下ドナー腎採取術
腎移植担当が泌尿器科に移管し、生体腎ドナー(提供者)に対しては腹腔鏡下での腎採取術を開始します。腹腔鏡下ドナー腎採取術は開腹術式に比較して、ドナーの疼痛減少や早期社会復帰が促進される明確なエビデンスがあり、整容性の向上も期待できます。これまでに、腹腔鏡下ドナー腎採取術を1,000例以上執刀してきており、安全かつ短時間での採取が可能であり、生体腎ドナーに対してより低侵襲な手術を提供できます。
腎動脈瘤
無症状であっても瘤径2cm以上、画像上増大傾向が認められる場合、さらに腎動脈瘤の急性解離を起こした場合は、出血予防のために治療適応となります。腎動脈塞栓術または外科的加療を選択します。外科的加療の場合は、可能な限り体内での動脈瘤壁切除、縫縮を計画しますが、体内での血行再建が困難な場合は同側の内腸骨動脈片を用いた自家腎移植なども考慮します。
尿管狭窄・尿管損傷に対する自家腎移植
外傷性や医原性の尿管狭窄や尿管損傷に対して、恒久的な尿管ステント留置や経皮的腎瘻カテーテル留置から離脱するために尿管尿管吻合や膀胱尿管吻合を行います。しかし、上部尿管損傷や損傷距離が長い場合は、腎臓の位置を変更する目的に自家腎移植を行った上で尿管吻合を行います。
小児泌尿器 内藤・井上
膀胱尿管逆流に対する経膀胱的腹腔鏡下逆流防止術
経膀胱的腹腔鏡下逆流防止術は、2005年に当科において本邦で初めて施行したことから、いわゆる本邦における経膀胱的腹腔鏡下逆流防止術のパイオニア施設です。この手術の特徴は、下腹部に約5~8mmの切開を3つで施行することにより、美容的に優れ術後の痛みも少ないことにあります。2012年4月からは保健適応で受けることができるようになりました。
さらに、同じく保険適応でヒアルロン酸注入法による内視鏡的逆流防止術にも取り組んでいます。どちらの方法を選択するかは症例ごとに親御様とよく相談して決めています。小児疾患担当の内藤講師は、日本小児泌尿器科学会の治療指針作成委員『膀胱尿管逆流の腹腔鏡手術』を務めました。
非触知精巣に対する腹腔鏡下手術(固定術・精線摘除術)
鼠径部に触知されないタイプの停留精巣を非触知精巣と言います。これらの非触知精巣に対しては、当科では診断から治療に至るまで腹腔鏡による対応を行っております。
先天性水腎症に対する腹腔鏡下腎盂形成術
様々な小児泌尿器疾患に対しても腹腔鏡下手術を施行しており、その効果や治療成績を本邦のみならず世界に向けて報告しています。小さな幼児においても先天性水腎症に対する腹腔鏡下腎盂形成術に取り組んでいます。15歳以上の症例では、最新の技術であるロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術を先進医療支援事業としてすでに5例施行し良好な成績を得ています。
夜尿症治療
小児疾患担当の内藤講師は、2016年に発刊された日本夜尿症学会の夜尿症診療ガイドライン作成委員を務めました。夜尿は本人のみならず世話をされている親御さんにとってもストレスのある疾患とされており、お子さまと親御さんにとって、確実で優しい治療が提供できるよう診療に携わっております。
女性泌尿器 藤原・齋藤
過活動膀胱
腹圧性尿失禁
骨盤臓器脱
排尿障害 浮村・藤原・粥川
排尿医障害とは
- 就寝後、夜間に何度もトイレに行く
- 尿の勢いが悪く、時間がかかる
- 急な尿意がありトイレまで間に合わない
- 尿が漏れ、下着が濡れることがある
などの症状に代表され、泌尿器科を訪れる患者さんの中で最も患者数が多い専門領域です。 このような症状を引き起こす疾患は、直接に命に関わることは稀ですが、日常生活で、しばしば本当に困って、家族も心配になる症状です。しかし、相談するのが恥ずかしいこともあって、専門医に相談できていない場合もすくなくありません。だからこそ、我々の専門外来では、患者さんが、本当に直してほしい、困っている症状に焦点をあてて、それを的確に診断し、さらに、様々な治療選択肢を準備し、最善の方法で治療できることを目標に診療を行っています。 最近注目される男性女性に共通の排尿障害である「過活動膀胱」、男性排尿障害の代表である「前立腺肥大症」、排尿の神経調節に関わる「脳梗塞」「糖尿病」「大腸や子宮などの骨盤部の手術後」などを原因とする「神経因性膀胱」「尿失禁」などの疾患を対象にしています。(女性には女性医師が対応します。) 標準的な薬物治療だけでは、満足が得られない場合は、前立腺肥大の標準的手術であるTUR-P(経尿道的切除術)や腹圧性尿失禁に対する尿道スリング手術(TVT,TOT手術)も行っています。
排尿医障害に対する鍼治療(担当:明治東洋医学院専門学校 講師 本城久司)
男性更年期・男性機能 邵・鳴川
基礎研究 上田(伊藤)紗弥
基礎研究の目的と意義
泌尿器系癌の発生・進展メカニズムの解明
癌の発生や進行に寄与すると推測される因子に関し、癌細胞におけるその分子機能を明らかにするとともに、疾患モデル動物を用いた個体レベルでの機能評価を行うことで、癌の発生・進展メカニズムの解明を試みています。
泌尿器系癌・排尿機能障害に対する新たな治療法の開発
臨床研究の同意について
- No. 001 分子標的療法時代における転移性腎細胞癌の予後に関する多施設疫学調査
- No. 002 一次治療としてアベルマブとアキシチニブ併用療法を受けた日本人転移性腎細胞癌患者における治療関連アウトカム評価のための多施設共同、後ろ向き観察研究
- No. 003 新規画像診断法を用いた前立腺診断の有効性評価
- No. 004 検診・健診データを用いた前立腺癌診断・治療体系に関する時系列研究
- No. 005 前立腺癌の薬物療法の有効性評価に関する検討
- No. 006 精巣腫瘍に対する化学療法の有効性評価に関する検討
- No. 007 精巣腫瘍に対する化学療法後の残存腫瘍に対する後腹膜リンパ節郭清の有効性評価に関する検討
- No. 008 過活動膀胱症状スコア(OABSS)のVisual Analog Scale(OABSS-VAS)の有用性の検討
- No. 009 転移性前立腺癌症例に対する内分泌単独療法と内分泌密封小線源療法併用療法の比較観察研究
- No. 010 日本における限局性前立腺がんに対するヨウ素125密封小線源永久挿入療法の長期予後に関する前向きコホート追跡研究
- No. 011 一般社団法人National Clinical Database(NCD)の手術・治療情報データベース事業への参加について
- No. 012 局所進行性又は転移性尿路上皮癌日本人患者に対する一次抗癌化学療法後のアベルマブ維持療法の治療実態と効果の検討-レトロスペクティブ,多機関共同,観察研究-
- No. 013 京都府立医科大学附属病院・泌尿器科で転移性腎細胞がんに対するアベルマブ(製品名:バベンチオ®)、アキシチニブ(製品名:インライタ®)の治療を受けられた患者様・ご家族の皆様へ
- No. 014 未治療日本人転移性腎細胞癌患者を対象としたニボルマブ・イピリムマブ併用療法の有効性と安全性に関する前向き観察研究へ同意されたことのある方またはそのご家族様へ
- No. 015 筋層浸潤性尿路上皮がん治療のため本学でニボルマブ(オプジーボ®)をご使用されていた患者さんの診療情報を用いた臨床研究へのご協力のお願い
- No. 016 AIによる尿細胞診の画像分析により膀胱癌の組織学的所見を予測するための研究
- No. 017 腎移植後患者の病状および治療に関する観察研究
- No. 018 進行性又は転移性の日本人尿路上皮癌を対象にしたアベルマブ維持療法及びその後の治療に対する多施設共同後向き観察研究